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医療従事者向け最新情報
関連主要文献紹介
2007年4月16日

日本シェーリング株式会社 (PDFファイル)バイオジェン・アイデック・ジャパン株式会社 (PDFファイル)からの情報提供を追加しています (2007年6月26日)

table of contents

インターフェロンベータに対する反応性と抗アクアポリン4抗体

1. NMO-IgG/抗AQP4抗体関連

(1) 査読のある英文誌掲載論文
  1. Lennon VA, et al.
    A serum autoantibody marker of neuromyelitis optica: distinction from multiple sclerosis.
    Lancet 2004; 364: 2106-2112.

    視神経脊髄炎 (neuromyelitis optica, NMO) に特異的な自己抗体を発見し,NMO-IgGと命名した.本抗体は,間接蛍光免疫法により,小脳,中脳,脊髄の軟膜,軟膜下,白質や灰白質内の毛細血管周囲 (astrocyte foot processと思われる部位) を染色した.北米患者におけるNMO-IgG陽性率は,NMOで33/45 (73%),多発性硬化症(MS)では2/22 (9%)であった.したがって,北米患者群ではNMO-IgGは感度73%,特異度91%と計算された.一方,日本人患者では,NMO-IgG抗体陽性率は,視神経脊髄型多発性硬化症(OSMS)で6/11 (58%),古典型MSで0/5 (0%)であり,感度58%,特異度100%となった.

  2. Lennon VA, et al.
    IgG marker of optic-spinal multiple sclerosis binds to the aquaporin-4 water channel.
    J Exp Med 2005; 202: 473-477.

    NMO-IgGの対応抗原が,aquaporin-4 water channel (AQP4) であることを示した.NMO-IgGは,先の論文で示した中枢神経組織以外には,間接蛍光抗体法によりマウス遠位部集合管 (distal urine-collecting tubules),胃粘膜の壁細 (basolateral membranes of parietal cells) を染色したが,胃,腎臓,肝臓の血管や自律神経組織は染色しなかった.またAQP4欠損マウスの脳は染めなかった.NMO-IgGはAQP4-transfected cellの細胞膜を選択的に染色した.AQP4をtransfectしたHEK-293 cellのlysateを患者血清で免疫沈降したところ,AQP4のみが患者血清と結合し,α-syntrophinやβ-dystroglycan,dystrophinなどとは結合がみられなかった.したがって,AQP4が膜上に位置するのにdystroglycan complexと結合していると考えられるが,その構成蛋白とは患者血清は反応せずAQP4とのみ反応することが明らかとなった.以上より,NMOは新しいautoimmune channelopathyである可能性がある.

  3. Nakashima I, et al.
    Clinical and MRI features of Japanese patients with multiple sclerosis.
    J Neurol Neurosurg Psychiatry 2006; 77: 1073-1075.

    NMO-IgG陽性率は,OSMSでは12/19 (63%),CMSでは2/13 (15%)であった.抗体陽性のOSMSは,抗体陰性のOSMSに比して,全盲の頻度(58%対0%)と3椎体を越える長大な脊髄病巣を有する頻度(100%対57%)が有意に高かった.抗体陽性のCMS2例は,非典型的な大脳病巣を呈した.

  4. Pittock SJ, et al.
    Brain abnormalities in neuromyelitis optica.
    Arch Neurol 2006; 63: 390-396.

    Wingerchuckらの1999年のNMOの診断基準において,視神経・脊髄以外の症候,初発時の脳MRI病巣を有さないという基準を除外したものを満たし,かつ脊髄MRIで3椎体以上の長大な病巣を有する患者60例について,脳病巣を検索した.NMO-IgGは41例 (68%) で陽性だった.脳MRI病巣は36例(60%)で認められた.多くは非特異的なものであったが,MS様の病巣も6例 (10%) でみられた.

  5. Pittock SJ, et al.
    Neuromyelitis optica brain lesions localized at sites of high aquaporin 4 expression.
    Arch Neurol 2006; 63: 964-968.

    NMO-IgGが陽性であった120例について脳MRIを検索した.うち8例 (6.7%) で,視床下部や脳室周囲 (第3脳室周囲,第4脳室周囲,側脳室周囲) に病巣を認めた.これらは,aquaporin-4が豊富に存在する部位に一致した.

  6. Matsuoka T, et al.
    Heterogeneity of aquaporin-4 autoimmunity and spinal cord lesions in multiple sclerosis in Japanese.
    Brain 2007 (Brain Advance Access; doi: 10.1093/brain/awm027)

    GFP-AQP4融合蛋白をトランスフェクトしたHEK293T細胞を用いた抗AQP4抗体のassay系を樹立した.本assay系では,Mayo Clinicで測定したNMO-IgGの感度は83.3%,特異度は100%であった.抗AQP4抗体は,MS連続113例のうちOSMSでは13/48 (27.1%),CMSでは3/54 (5.6%),脳幹脊髄型MSでは0/11 (0%),その他の神経疾患では0/52 (0%),健常対照では0/35 (0%)で陽性だった.脊髄MRIで3椎体以上の長大な病巣 (LESCL) とBarkhof診断基準を満たすOSMSでは陽性率55.6% (5/9)ともっとも高率だった.多変量解析では,抗AQP4抗体は,再発率の高さとのみ有意な相関を示し,OSMSやLESCLとの有意な相関は示さなかった.抗体陽性MSのLESCLは上位から中部胸髄にかけて存在し,軸位断では,中心灰白質に病巣がもっとも高率に見られた.一方,抗体陰性のOSMSのLESCLは頚髄から胸髄にかけて極めて長い病巣を呈し,軸位断では脊髄全部が侵されていた.抗体陰性のCMSのLESCLは主として頚髄に存在し,軸位断では辺縁を侵していた.抗体陽性で2006年のWingerchukらのNMO診断基準を満たす14例は全例女性で,高い再発率を示し,高率に脳MRI病巣を認め,インターフェロンベータ1bに反応しなかった (再発率の減少が見られなかった).一方,抗体陰性のOSMSでLESCLを伴う18例では,インターフェロンベータ1bにより再発率の減少を認めた.なお,本研究では,Mayo Clinicで測定したNMO-IgG抗体価と総合障害度 (EDSS) は有意な負の相関を示した (つまり抗体はprotectiveな可能性も示唆された).

2. 日本人・アジア人におけるインターフェロンベータ投与中の増悪について

(1) 査読のある英文誌掲載論文
  1. Ochi H, et al.
    Time-dependent cytokine deviation toward the Th2 side in Japanese multiple sclerosis patients with interferon beta-1b.
    J Neurol Sci 2004; 222:65-73.

    日本人MSでIFNβ-1b投与後48週まで継時的に末梢血CD4陽性T細胞のTh1,Th2サイトカイン産生能を検討した (prospective study).観察期間中にOSMSでは5/6 (83%) で再発がみられ,CMSでは再発は4/16 (25%)にしか起こらず,再発はOSMS群で有意に高かった.IFNβ-1b投与2週後より,IL4などのTh2サイトカインの産生が亢進し,IFNγ/IL4比は有意に低下した.半年以降は次第にIL4もIFNγも産生能が低下してきたが,低下はIFNγでより顕著であったため,IFNγ/IL4比はやはり低下したままであった.再発群では非再発群より有意にIFNγ産生細胞の率が高かった.

  2. Saida T, et al.
    Interferon beta-1b is effective in Japanese RRMS patients: a randomized, multicenter study.
    Neurology 2005; 64: 621-630.

    日本人MSにおいてIFNβ-1b低用量群 (50 mg) と高用量群 (250 mg) の2群に分けて薬効をrandomized multicenter studyで検証した (prospective study).年間再発率は,低用量群で1.069から高用量群で0.763と28.6%減少した (P=0.047).OSMSでは年間再発率は,低用量群1.41から高用量群0.764に46%減少し,CMSでは低容量群0.866から高用量群0.496に43%減少し,両病型ともIFNβ-1bが有効と判断された.

  3. Mei F-J, et al.
    Long-term favorable response to interferon beta-1b is linked to cytokine deviation toward the Th2 and Tc2 sides in Japanese patients with multiple sclerosis.
    J Neurol Sci 2006; 246: 71-77.

    IFNβ-1bを3年間投与した日本人MSでの治療前後でのT細胞内のサイトカイン産生能を比較した (prospective study).IFNβ-1bにより,CD4陽性T細胞,CD8陽性T細胞ともにIL4やIL13などのTh2サイトカインの産生細胞%が増え,一方,IFNγ産生細胞の絶対数は結いに減少した.IFNγ/IL4比は3年後においても非再発群では有意に低下していたが,再発群ではこのようなIFNγ/IL4比の低下は認められなかった.

  4. Wang A-G, et al.
    Early relapse in multiple sclerosis-associated optic neuritis following the use of interferon b-1a in Chinese patients.
    Jpn J Ophthalmol 2006; 50: 537-542.

    視神経炎を有する20人の中国人MS患者でIFNβ-1aの効果を後ろ向きに検証した(retrospective study).投与群10例は,非投与群10例と比較し,年間再発率,後遺症に有意な差を認めなかった.しかし投与群は3ヵ月以内に視神経炎での再発が50%で見られた.

  5. Warabi Y, et al.
    Interferon beta-1b exacerbates multiple sclerosis with severe optic nerve and spinal cord demyelination.
    J Neurol Sci 2007; 252: 57-61.

    HLA-DPB1*0501を有する日本人MS患者6例にIFNβ-1bを投与し,うち3例でむしろ増悪がみられた.1例は数週以内に再発し車椅子状態となり,1例は3ヵ月後に頚髄と視神経に2回の再発を起こし,もう1例は二次性進行型であったが,2年以内に5回の重症の視神経障害があり全盲となり障害が進行した.HLA-DPB1*0501を有する日本人MSでは視神経と脊髄の障害が高度でNMOに類似する.

(2) 査読のある和文誌

インターフェロン投与に伴う神経症状の増悪に関する報告

  1. 林江里彩ほか.
    意識障害,記憶障害を呈し,MRIで視床・視床下部に病変を認めた多発性硬化症の1例.
    神経内科.2003; 59: 297-300.
  2. 田澤浩一ほか.
    IFNβ-1bで増悪したと考えられた再発寛解型多発性硬化症の1例.
    神経内科.2005; 62: 269-274.
  3. 梶山幸司ほか.
    慢性C型肝炎に対するインターフェロンα-2b/リバビリン併用療法後に発症し,抗アクアポリン4抗体が陽性であった多発性硬化症の1女性例.
    神経内科.2007; 66: 180-184.
(3) 班会議報告
  1. 吉良潤一ほか.
    多発性硬化症 (MS) 2004年全国臨床疫学調査結果第3報: 合併症からみた日本人MSの病像.
    厚生労働科学研究費補助金 (難治性疾患克服研究事業) 免疫性神経疾患に関する調査研究 (主任研究者 吉良潤一).平成17年度 総括・分担研究報告書 (2005年) p151-152.
  2. 小川雅文ほか.
    インターフェロン・ベータ1b療法導入及び中止後の問題について.
    厚生労働科学研究費補助金 (難治性疾患克服研究事業) 難治性疾患の画期的診断・治療法に関する研究班 (主任研究者 山村隆).平成16−18年度 総括研究報告書 (印刷中).
  3. 清水潤ほか.
    多発性硬化症の診断のもとにIFN-β治療を行い急性増悪を認めた7症例の臨床像解析.
    厚生労働科学研究費補助金 (難治性疾患克服研究事業) 免疫性神経疾患に関する調査研究 (主任研究者 吉良潤一).平成18年度 総括・分担研究報告書 (印刷中).
(4) 学会発表抄録

学会誌でISNN番号があるもの

  1. 横山和正ほか.
    多発性硬化症インターフェロン開始後のMRI病変パターンの解析.
    神経免疫学.2004; 12: 37.
  2. 川井元晴ほか.
    インターフェロンβ導入後の多発性硬化症の再発に関する臨床的検討.
    神経免疫学.2005; 13: 100.
  3. 小川剛ほか.
    視神経脊髄型多発性硬化症における抗Aquaporin-4抗体の臨床的意義.
    神経免疫学.2007; 15: 45.
  4. 森雅裕ほか.
    日本人多発性硬化症のサブグループとインターフェロン治療反応性.
    神経免疫学.2007; 15: 93.
(5) 和文誌Letter・学会発表抄録など

増悪例

  1. 中山聡子ほか.
    インターフェロンβ治療後に重症化し,高熱と髄液細胞数増多とともに四肢麻痺となった多発性硬化症.
    臨床神経学.2002; 42: 653.
  2. 神崎真実ほか.
    IFNβ-1bが増悪の誘因となったと思われる多発性硬化症の1例.
    臨床神経学.2002; 42: 268.
  3. 加藤秀紀ほか.
    多発性硬化症類似の中枢神経病変を呈しインターフェロンβ療法により悪化がみられた原発性シェーグレン症候群 (SjS) の一例.
    臨床神経学.2002; 42: 85.

    橋本病とシェーグレン症候群を合併した多発性硬化症で,インターフェロンβ投与開始後に症状が増悪した症例.増悪時の病変は多発性硬化症としては非典型的であった

  4. 畑中裕己ほか.
    IFN-β使用開始後にtumefactive lesionを発症した多発性硬化症の2例.
    臨床神経学.2003; 43: 969.

    インターフェロンβ投与の伴う原疾患の増悪ではないが,視神経脊髄型多発性硬化症に対してインターフェロンβを投与する際には注意が必要としている

  5. 西山治子ほか.
    MSにおけるIFNβ1b導入前の血清IL-10,IL-12の値と再発予防効果の検討.
    臨床神経学.2003; 43: 1030.

    調査の対象5例全例でインターフェロンβ投与後に再発を認めた.インターフェロンβ投与と再発の関連については議論されていない

  6. 宮田さやかほか.
    多発性硬化症とSjögren症候群:頻回の再発とインターフェロンβ-1bの無効であった1例.
    臨床神経学.2003; 43: 236.

    シェーグレン症候群を合併した多発性硬化症では,インターフェロンβ反応性が悪い可能性を指摘

  7. 林孝太郎ほか.
    Interferon-β投与が神経徴候の増悪に関与したと思われるMSの1例.
    神経治療学.2003; 20: 276.

    インターフェロンβ投与の伴い視神経炎で再発.中止後再開したところ意識障害と左片麻痺で再発し,両側大脳白質にび漫性の多発性病変を認めた症例

  8. 平田順一ほか.
    多発性硬化症の再発予防に対するinterferon β使用8症例についての検討.
    神経治療学.2003; 20: 275.

    有効例の報告の他,無効例と思われる報告も含まれている.重篤な副作用の記載あるも詳細は不明

  9. 田中正美ほか.
    多発性硬化症でインターフェロンβ1b投与による増悪あるいは効果がない場合の患者側の要因の可能性について.
    神経内科.2003; 58: 225-226.
  10. 小澤恭子ほか.
    多発性硬化症の治療—インターフェロン療法中断症例の検討.
    臨床神経学.2004; 44: 1123.

    インターフェロンβ投与後の増悪に関する報告ではないが,中断例を検討した報告

  11. Wang A-Gほか.
    台湾における視神経炎を伴う多発性硬化症患者に対するインターフェロンβ1a治療の臨床経験(Clinical experience of interferon beta-1a in multiple sclerosis patients with optic neuritis at Taiwan.)
    神経科学.2004; 21: 26.

    視神経炎を伴う多発性硬化症でもインターフェロンβ投与後に有意差はないものの再発頻度は減少する傾向にあった.しかし早期に視神経炎の再発が生じる可能性が指摘されている.査読のある英文誌掲載論文4の元となった報告と考えられる

  12. 川井元晴ほか.
    多発性硬化症再発に関する臨床的検討.
    臨床神経学.2004; 44: 1059.

    自己抗体陽性例ではIFNβ不応性である可能性を指摘

  13. 田澤浩一ほか.
    IFNβ-1b投与で増悪した視神経脊髄型多発性硬化症の1例.
    臨床神経学.2004; 44: 325.

    査読ある和文誌2のもととなった学会報告

  14. 田中耕太郎ほか.
    多発性硬化症患者におけるインターフェロン-β-1bの治療効果.
    神経治療学.2004; 21: 351.

    有効との報告であるが,導入後に増悪回数が増加した1例が報告されている

  15. 中嶋秀人ほか.
    多発性硬化症に対するIFN-β1bの治療評価:responderとnon-responderの臨床背景の比較.
    神経治療学.2005; 22: 369.

    投与開始後の増悪に関する報告ではないが,インターフェロンβは視神経脊髄型多発性硬化症より通常型多発性硬化症で有効例が多いとの報告

  16. 田中耕太郎ほか.
    多発性硬化症患者におけるinterferon-β-1bに対する中和抗体の影響.
    神経治療学.2005; 22: 369.

    インターフェロンβが有効であるとの報告であるが,一方で投与開始後増悪回数が増加した1例が報告されている

  17. 高田和男ほか.
    当院における頻回再発寛解を繰り返す多発性硬化症患者におけるinterferon療法の検討.
    神経治療学.2005; 22: 368.

    インターフェロンβ導入直後に増悪がみられた2例の報告

  18. 井上貴仁ほか.
    小児期発症多発性硬化症に対するインターフェロンβ-1bの使用経験.
    日本小児科学会雑誌.2005; 109: 294.

    小児期発症多発性硬化症に対するインターフェロン療法.1例は継続投与.1例は導入後の再発,再開後の再発のため中止となっている

  19. 山寺みゆきほか.
    インターフェロン療法を行った小児期発症多発性硬化症の一例.
    臨床神経学.2005; 45: 186.

    小児期発症多発性硬化症に対するインターフェロン療法.導入後の症状については記載無し

  20. 杉本泉ほか.
    interferonβ開始後約1ヶ月で著明な細胞数増多とともに対麻痺となった多発性硬化症.
    臨床神経学.2005; 45: 51.
  21. 樋口勝嗣ほか.
    多発性硬化症の再発予防に対するinterferonβの使用経験.
    神経治療学.2006; 23: 319.

    約2/3の症例で有効であったとする報告以外に,悪化2例の報告がある

  22. 山崎正禎ほか.
    多発性硬化症のinterferonβ療法の使用状況と副作用に関する検討.
    神経治療学.2006; 23: 318.

    インターフェロンβ投与に伴う副作用の報告.同時にMS症状悪化1例の報告あり